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膜天井システムで、天井の常識を変える

株式会社マクライフ 

牛垣 希彩

津山市

株式会社マクライフの牛垣希彩さんにお話を聞きました。

 

#膜天井システム

#耐震化

#空調効率化

#イノベーション

#後継者として

#アトツギ

 

index

1膜を張る天井システム「マクテン」

丸尾

マクライフという会社について教えてください。

牛垣

膜材で作る天井システム「マクテン」を全国に向けて、販売・施工しています。

 

一般的な天井との違いは二つあって、一つ目は素材です。一般的な天井は重たいボード材を吊り金具で吊り下げていますが、マクテンは平米当たり640グラムの軽いシートだけを使います。

 

二つ目はシステムの違いです。マクテンでは吊り具を一切使いません。特殊な金具を壁に付けてシートを巻き上げています。トランポリンや太鼓のように「張っている」イメージですね。

丸尾

膜の大きさはどれくらいなのですか?

牛垣

300平米ほどの広さであれば、15メートル×20メートルの一枚で対応できます。膜天井でここまで大きい面積を施工できる会社は、おそらく他にないと思います。

 

一般的な天井と比べると、平米当たりの重さは40分の1ほど。工期もかなり短縮できるので、面積が大きければ大きいほどメリットが発揮されます。大きいところが逆に得意という、少し変わった天井システムです。

“空間を仕切る”という発想

丸尾

マクテンはどういうところに使われていますか?

牛垣

公共施設や学校の廊下やエントランス部分の吹き抜けなどに採用いただいています。工場にも導入事例があり、倉庫も今後施工の予定があります。工場や倉庫からのお問合せも増えています。

 

大きな工場や倉庫からは、安全対策に加えて空調効率を上げたいという声も寄せられますね。広くて天井が高いところで空調を入れると電気代がかさみますが、マクテンによって天井の位置を下げることで、空調効率を大幅に改善できます。

 

今、私は簡単に天井を下げると言いましたが、他の工法でやろうとすると難しいんですよ。法律面でも安全性をチェックする必要がありますし、工事期間中は工場などの操業ができません。マクテンだったらシートを広げてパンと引っ張ったら終わりです。

丸尾

仕切って空間を縮める発想は、膜であるがゆえですよね。今までと違う発想でおもしろいです。

牛垣

案外、この仕切るという発想は他でも聞きませんね。膜天井を扱う会社は他にもありますが、弊社ならではの特徴だと思っています。安全面以外でも、課題解決の選択肢になれたらと思っています。

きっかけとなった東日本大震災

丸尾

会社の成り立ちや、マクテンが開発された経緯などを教えていただけますか?

牛垣

祖父母が創業したテント屋が、マクテンを開発した「ファインアートかわばた」の前身です。商店街でよく見るような軒先のテントから始まり、今ではテント倉庫や工場内の間仕切り、シートシャッターなどを手がけています。

丸尾

ファインアートかわばたは、膜の性質を生かした様々なものを手がけられて来ていますよね。

牛垣

マクライフ創業の大きなきっかけは東日本大震災です。津波だけでなく、避難所の天井落下による被害も相当なものでした。ファインアートかわばたの社長も務める私の父は、安全な場所であるはずの避難所が避難所として機能していないことに衝撃を受けたそうです。

 

そんな中、テレビで専門家が「天井を膜にしたらいい」と言っているのを見て、自分たちにも何かできるかもしれないと思い立ちました。試行錯誤を重ね、津山市役所の協力も得て、ついにマクテンが完成。その販売や宣伝を担う会社として、2017年にマクライフを立ち上げたという流れです。

父の想いを受け継いで

丸尾

続いて、希彩さんご自身についてお聞かせいただけますか?

牛垣

生まれは津山です。高校卒業後は福岡の北九州市立大学の文学部に進みました。そんな中であるNPO法人の方と出会い、「カンボジアに行ってみないか」と誘われたんです。1週間のホームステイを通して現地の友達もでき、大学生の頃は年に2回くらいのペースでカンボジアを訪れていました。

 

今にして思うと結構ハードな経験もありましたが(笑)、自分の中で転機にもなりました。行動さえ起こせば、自分が見てきた世界が当たり前ではないと感じる出来事が確実に起こります。そんな経験を経て、あれこれ考えるよりも先に行動するようになりました。

 

大学卒業後は百貨店の天満屋に入社しました。食品部門で4年半くらい働きましたが、昇進試験に落ちてしまったんです・・・(笑)。その時ショックは受けましたが、この先何をしていきたいのか見つめ直すきっかけになりましたね。

 

将来について考える中、自分で事業を立ち上げた友達や、先に家業に戻った弟と話す機会があり、おもしろそうに仕事の話をする姿がキラキラ輝いて見えました。また、親と会社の課題について話をする中で、「誰かのサポートがあればいいのかな」と感じる瞬間もあって。それで2022年2月に退職し、マクライフに入社しました。

丸尾

まったく異業種から戻られた形ですね。

牛垣

テントの知識も建築の知識もなく、マクライフがどんな会社かも知らない状態からのスタートでした。父から薦められた岡山イノベーションスクールにも入り、そこで学んだプレゼンのやり方などを活かしながら、父と一緒に営業して回っていました。

 

ケンカも多かったですよ(笑)。私は外からの目線を持った気になって調子に乗っているから、「こうした方がいい!」などあれこれ言ってしまうんです。でも父からは「何も分かっていないやつが表面だけで何を言っているんだ」という具合に、毎日のように言い合いをしていました。

 

その関係が変わり始めたキッカケの一つは、2022年の11月に出場した「岡山イノベーションコンテスト」でグランプリをいただけたことです。発表を見た父から「自分の思いがちゃんと伝わっていると感じた」と言われ、少しずつ分かり合えるようになりました。

 

2023年3月には中小企業庁が主催の「アトツギ甲子園」にも出場しました。こちらでも賞をいただけて、また少し父との仲が深まるきっかけになったと思います。アトツギ甲子園では家業の文化や歴史を振り返りながら伝えていくのもポイントだったので、そこで初めて後継者としての意識も芽生えましたね。

「できるか」ではなく「やるかやらないか」

丸尾

これからのビジョンをお聞きしたいと思います。

牛垣

自分にとってマクテンは人とつながるツールの一つだと思っています。このツールから誰かとつながっていって、アイデアの実現や困りごとの解決ができればいいですね。

 

今までそれはテント屋だけの仕事でしたが、そこに建設業者やデザイナーが絡んできてもいい。マクテンでつながった人たちと街をつくるみたいな、そんな風に世界が膜でつながれたらおもしろいと考えています。

 

もう少し現実的な話をすると、マクテンは東北の震災をきっかけに開発されましたが、東北ではまだ施工できていないですし(2023年10月時点)、認知度もまだまだです。だから、まずは東北でマクテンを知ってもらい、商品を届けて喜んでもらう。父が思いを持って生み出したものをその地に届けるのは、娘である私の役割だと感じています。

丸尾

海外でも大きな災害が起きていますし、建築そのものを見直すきっかけとして世界的に広がっていく可能性も感じますね。

牛垣

たまたま縁があって、福島県に行かせてもらえることになりました。そこで認めてもらえれば日本のものづくりとしても価値が示せるので、そこから海外に発信していけないかという期待はあります。

丸尾

最後に、大切にされている言葉などはありますか?

牛垣

小学6年生の頃に担任の先生に教えてもらった「できるかできないかじゃない、やるかやらないかだ」という言葉です。悩んでいることがあっても、この言葉に背中を押されてきました。やってしまえば、その先に広がるものはあまりにも大きく、世界が変わります。私の人生を支えてくれている言葉ですね。

膜天井システムで、天井の常識を変える

株式会社マクライフ

2017年に設立。強化ファイバーシートを使用した膜天井システム「マクテン」の販売や施工を手がける。吊り金具を使用せずに軽量なシートを張る新たな天井システムで、天井耐震化や空調効率改善などの面で注目されている。

お話を聞かせていただきありがとうございました!
「膜でつくる天井」という発想はお話を聞いていてとてもワクワクするものでした。「マクテン」が生まれた経緯もお聞きし、もともと歴史のあるファインアートかわばたの強みを活かし、東日本大震災での屋根の倒壊などを見たことをきっかけに、アイデア次第でこれまでの常識も変えていくような商品が生まれたのだと感銘を受けました。牛垣さんは「岡山イノベーションコンテスト」や「アトツギ甲子園」などでも活躍されており、岡山県北地域から世界に広がる事業になればと期待が高まります!牛垣さんは福岡からUターンの、天井の常識をかえるかえーる人でした。

 

  • 取材日:2023年10月17日
  • 撮影地:株式会社マクライフ(岡山県津山市)
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